みなさん、こんにちは。
アメリカ・ニュージャージー(NJ)州で、2度目の駐妻ライフを送っているHatsy(はっちぃ)です。
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みなさんは、裁判を傍聴した事はありますか?
私は日本で裁判関係の仕事をしていたので、アメリカに来てから、いつかはアメリカの裁判も見たい!と思っていましたが、ついに意を決して、裁判傍聴してきました。
今回は、アメリカの裁判傍聴について、
- アメリカの裁判所の基本情報
- アメリカと日本の裁判所の違い
- 実際に裁判を傍聴してきました!(入り口での荷物チェック、裁判所内部の様子、実際の裁判傍聴の様子)
- アメリカの裁判を傍聴した感想
をまとめました。
アメリカの裁判所のしくみや日本の裁判所との違いなども調べた(正直めちゃ時間かかりました…汗)ので、裁判傍聴体験記と一緒にご紹介したいと思います。
偶然でしたが、あの超有名な事件も傍聴できましたよ!
アメリカの裁判所の基本情報
アメリカには、合衆国連邦裁判所 (United States Federal Courts) と各州に置かれた州裁判所 (State Courts) があります。それぞれが異なった組織で、適用される法律も違います。
➀アメリカ合衆国連邦裁判所(United States Federal Courts)
アメリカ合衆国連邦裁判所(United States Federal Courts)は、アメリカ合衆国憲法に基づく、国の裁判所(Federal Courts)です。
連邦裁判所が扱う事件で主なものは、以下のものです。
①専属管轄(連邦裁判所でしか扱えない事件)
→アメリカ合衆国が被告となる不法行為上の訴訟など。
➁競合管轄(連邦裁判所も州裁判所も扱える事件)
→このうち、主に、連邦問題管轄、州籍相違管轄(異なる州の市民間での訴訟で、訴額が7万5000ドルを超える民事訴訟)が多い。
連邦裁判所の裁判官(憲法3条裁判官)は、
①大統領が指名し、連邦議会上院の過半数の承認で決まります。
➁弾劾を受けて有罪をならない限り、任期は終身。過去には、90歳代の裁判官もいました。
連邦最高裁判所(Supreme Court of the Unite States)
連邦最高裁判所(Supreme Court of the Unite States)とは、国の裁判所の中で最上位の裁判所です。
所在地 | ワシントンD.C. |
裁判官 | 9名(首席判事1名、陪席判事8名)。 |
大統領による連邦最高裁裁判官の指名が、大きなニュースになる理由
大統領による連邦最高裁裁判官の指名については、よく大きなニュースになります。
保守派(共和党)の裁判官か、リベラル派(民主党)の裁判官が選ばれるかは、その時の大統領の意見が反映されます。
どのような人物を最高裁判事に任命しそうかを根拠に、どの大統領に投票するかを決める人もいるようです。
というのも、多民族国家アメリカでは、少数派の利益を実現するためには、裁判所が大きな役割を果たすべきという考え方があるからです。
議会では、多数決原理に基づいて決定がされるため、少数派の利益は実現されにくいですよね。
そういう場合、少数派の人たちは、自分たちの利益実現を目指して裁判所に訴えます。
裁判所が少数派の意見を反映した判決を下すと、彼らが主張していた利益は、議会の決定を待たなくても、正当な権利として位置づけられることになるのです。
アメリカのように社会的多様性が高く、常に少数派が存在する国では、裁判所は特に重要な意味を持つのようです。
連邦下級裁判所
連邦下級裁判所とは、国の裁判所の中で、連邦最高裁判所以外の裁判所の総称です。
所在地 | 13の地区に分かれています。 ニューヨーク州は第2巡回区、ニュージャージー州は第3巡回区です。 |
連邦下級裁判所の種類は、以下のとおりです。
連邦控訴裁判所 (United States Court of Appeals) | 連邦控訴裁判所には、昔は専属の裁判官がおらず、最高裁の裁判官が巡回して裁判を行っていたという名残で、Circuit Court(巡回裁判所)とも呼ばれます。 |
連邦地方裁判所 (United States District Court) | 連邦の一審裁判所 (trial court)です。 |
その他 | 倒産裁判所、通商裁判所など。 |
➁州裁判所(State Courts)
州裁判所(State Courts)は、各州にあり、各州の法律が適用されます。州によって、裁判所の名称も異なります。ニューヨーク州など、郡裁判所を置く州もあります。
州裁判所の種類は、以下のとおりです。(※Wikipediaを参照)
最上級裁判所 | 州裁判所の中での最高裁判所。 ニューヨーク州では、「上訴裁判所(Court of Appeals)」、ニュージャージー州では、「最高裁判所(Supreme Court)」と呼びます。 |
中間上訴裁判所 | ニューヨーク州では、「高位裁判所控訴部(Supreme Court, Appellate Division)」、ニュージャージー州では、「上位裁判所控訴部 (Superior Court, Appellate Division)」と呼びます。 |
一審裁判所 (trial court) | ニューヨーク州では、「地区高位裁判所(District Supreme Court)」や「郡裁判所(County Court)」、ニュージャージー州では、「上位裁判所(Superior Court)」と呼びます。 |
アメリカと日本の裁判所の違い
アメリカと日本の裁判所の違いで、私が思いついたものを挙げてみました。
アメリカ | 日本 | |
組織体系 | 連邦裁判所と州裁判所があり、それぞれ別の法律に基づく。 | 最高裁も地方裁判所も一つの組織体系。同じ法律に基づく。 |
最高裁裁判官の資格 | 連邦最高裁では、法曹資格のない人が選ばれたことはない。(法律上何の規定もないので、法曹資格がなくても裁判官になること自体は可能。) | 最高裁では、法曹資格がない人も選ばれている。(官僚や民間企業出身者など。) |
市民参加制度 | 「陪審員制度」 ほとんどの場合、陪審員が有罪か無罪を決定し、裁判官が量刑を決定。 陪審員の数は、連邦裁判所では原則12人。州裁判所では州によって異なる。 | 「裁判員制度」 裁判官と裁判員が一緒に、有罪か無罪かと量刑を決定。 裁判員は6人。 |
裁判所内の撮影 | 多くの州裁判所では撮影OK(ただし、法廷内は裁判官の許可が必要)。 連邦裁判所では撮影禁止のところが多い。(裁判所によって違うので、一概には言えません…。) | 裁判所内は許可がない限り、撮影禁止。 |
黒い法服 | 裁判官のみ | 裁判官と書記官 |
木槌(ガベル) | あり(私が傍聴した日には、見てないですが…) | なし |
木槌(ガベル)については、日本の刑事ドラマの中では裁判中に使われていることもありますが、実際には日本の法廷にはありません。
実際に裁判を傍聴してきました!
2021年12月に、ロウワーマンハッタンにある裁判所で、実際に裁判傍聴をしてきた様子をレポートします。
➀Thurgood Marshall United States Courthouse【連邦控訴裁判所】
基本情報
Thurgood Marshall United States Courthouseは、連邦(Federal)の控訴裁判所(United States Court of Appeals)です。
ニューヨーク州は第2巡回区なので、英語では「United States Court of Appeals for the Second Circuit」と言います。
1967年に、黒人初の最高裁判所判事に選ばれた Thurgood Marshall にちなんで名づけられました。彼は、人権擁護派の弁護士で、黒人の公民権運動のリーダーだったキング牧師にも協力しました。
住所 | 40 Foley Square, New York, NY 10007 |
ウェブサイト | Thurgood Marshall United States Courthouseのウェブサイト |
ヘルスチェック、荷物チェック
入り口を入ると、係員がいたので、傍聴に来た旨を話すと、入館の方法を説明してくれました。
まず、スマホでQRコードをスキャンしてヘルスチェックの質問に答えます。終わったら、係員に完了画面を見せます。そして、機械で検温します。(2021年12月時点)
その後、超厳重な持ち物チェックを受けます。荷物と身体のX線チェックを受け、建物内は撮影禁止のため、スマホとアップルウォッチは回収されて、引換え用の番号札を渡されました。
この持ち物チェックの係員がめっちゃ不愛想でしたが、とりあえず言う事に従って、無事入館できました。ペットボトルの水がかばんに入っていましたが、スルーでした。
廊下
荷物チェックを抜けた先の廊下に、その日どんな事件が行われるかを示した電子の開廷表がありました。廊下は、広く、白を基調としてとても明るく、美術館のような感じでした。
廊下の両側には、連邦最高裁の裁判官たちの経歴が書かれた写真入りの大きなポスターが飾られていました。過去の裁判官のものもあり、RBGのもありました。
廊下にたくさんの人がいたので、そこの法廷(110号室)に入ったら、職員に「ここの傍聴席は満席だから、506号室へ行ってください。」と言われたので、エレベーターで5階へ向かいました。
法廷内
指示された506号室に入ると、裁判官などはおらず、スクリーンが3つあり、先ほど入った110号法廷の中継を見れるようになっていました。
傍聴席はコロナの影響で、 一列置きにテープが貼られ座れなくなっていました。さらに、横の間隔も空けているので、一列につき3人しか座れませんでした。
メディア関係者っぽい人がたくさんいて、何か重大事件っぽいなという雰囲気を感じたので、法廷内にいた裁判所の職員に聞いたら、なんとあの性犯罪目的の未成年者誘拐・斡旋共謀などの罪に問われているギレーヌ・マクスウェル(Ghislane Maxwell)の裁判でした。
この日は、捜査にかかわったFBIの証人尋問でした。証人は、裁判官の横で宣誓し、証言していました。(日本では、裁判官の正面で証言します。)
裁判所の職員はとても親切で好印象でした。こぶしほどの大きさの「court officer」の豪華なバッジを付けていました。(日本では、裁判所職員のバッジは、親指の爪ほどの大きさです。)
➁New York County Supreme Court【ニューヨーク郡高位裁判所控訴部】
New York County Supreme Court(ニューヨーク郡高位裁判所控訴部)は、この日は、開廷なしでした。
住所 | 60 Centre St, New York, NY 10007 |
ウェブサイト | New York County Supreme Court のウェブサイト |
➂New York County Criminal Court【ニューヨーク郡犯罪裁判所】
New York County Criminal Court(ニューヨーク郡犯罪裁判所)は、建物の威圧感がすごかったです。
住所 | 100 Centre St, New York, NY 10013 |
ウェブサイト | New York County Supreme Court のウェブサイト |
ヘルスチェック、荷物チェック
荷物チェックは、Thurgood Marshall United States Courthouse(連邦控訴裁判所)より簡易的でした。スマホも回収されることはありませんでした。
警察官に検温してもらい、2つ質問(〇日以内に州外に行ってないか、コロナの症状がないか)されました。(2021年12月時点)
犯罪裁判所だからか、1階エントランスには10人以上警察官がいて、物々しかったです。
廊下、事務室
建物は老朽化が進んでいて、廊下は薄暗く、不気味な雰囲気。先ほど訪れた連邦裁判所と雰囲気が全く違いました。
1階に紙の開廷表がありましたが、3年以上前のものでした笑。
10階の職員のオフィスへ行くと、ホワイトボードに本日の事件(法廷番号と事件名)が書いてあります。この日は、572号法廷で裁判をやっていたので、道の反対側の建物に移動し、再度ボディチェック等を受け、5階の法廷へ向かいました。
法廷内
法廷内に入ると、被告人の弁護士(男性)が話している最中でした。
傍聴席に座っている陪審員(陪審員は普段は裁判官の周りに座っていますが、コロナの影響で、ソーシャルディスタンスを取るためか、傍聴席に座っていました。)に向かって話していました。
被告人はずっとイヤホンをしていました。
その後、検察官(女性)の話に移りました。被害者は、検察官の隣に座っていました。
この事件は、被告人(加害者)が男性、被害者が女性の、性犯罪の事件でした。
法廷にあるテレビ画面に別室が映っていたので、この別室で被害者が発言するのかと思っていましたが、加害者も被害者の同じ法廷内にいて、驚きました。
(日本では、被害者と被告人の間に遮蔽版が設置されたり、被害者は別室にいたりする場合が多いです。)
傍聴席から見て、柵の向こうには、裁判官、書記官、事務官?、被告人と弁護士、検察官と被害者、警察官3人、ほかに女性2人がいました。
裁判官のみ黒い法服を着ていました。(日本では、書記官も法服を着ます。)
書記官の席には、事務机、大量の書類が入った本棚、コーヒーセット、お菓子などがあり、完全に事務室のようでした。(日本では、法廷とは別に、書記官や裁判官の事務室があります。)
傍聴席には、陪審員(約12人)と思われる人が座っていました。一番後ろには、メディアと思われる人が数人座っていました。
ちなみに、法廷内は、裁判官の許可がない限り、撮影禁止です。
アメリカの裁判を傍聴した感想
今回、アメリカの裁判所へ行き、裁判を傍聴してまず思ったことは、日本よりアメリカの裁判の方がラフだなということ。
法廷にコーヒーマシーンなどがあり、完全に書記官の事務室のようになっていたのにはびっくりしましたし、書記官は裁判の途中で法廷から退出したりもしていたので、「裁判の記録はしなくて良いの!?」と思いました。
裁判官や警察官も、裁判中にスマホを触ったりしていたので、厳格な雰囲気の日本の裁判と結構違うなと思いました。
ただ、裁判所の建物の雰囲気や法廷の造りは似ており、「裁判所=厳か、非日常、緊張感」という独特の雰囲気は同じだなと思いました。
まとめ
今回は、アメリカの裁判傍聴について、
- アメリカの裁判所の基本情報
- アメリカと日本の裁判所の違い
- 実際に裁判を傍聴してきました!(入り口での持ち物チェック、裁判所内部の様子、実際の裁判傍聴の様子)
- アメリカの裁判を傍聴した感想
をまとめました。
裁判傍聴というのは、なかなか勇気のいることで、日本の裁判傍聴ですら経験された方は少ないと思います。
アメリカでも日本でも、裁判傍聴は誰でもできるものなので、もしアメリカの裁判には興味あるけど、傍聴は尻込みしていたという方がいらっしゃれば、この記事でイメージを持ってもらえたら嬉しいなと思います。
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裁判所があるロウワーマンハッタンの官庁街の様子は、こちら!
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